
INTERVIEW02
「新井湯」という地域拠点で、訪問看護を立ち上げる理由
看護師歴20年以上の新海さんは、かつて働いていた「新井湯」という地域密着の拠点で、訪問看護を立ち上げることを決意。新井湯は90年以上にわたり地域に親しまれてきた場所であり、様々な職種がひとつ屋根の下に集まり、速やかに情報共有ができるという強みを持っています。
新井湯で訪問看護ステーションの管理者となる新海さんに、新井湯という企業で訪問看護を提供する意義や、そこに懸ける想いなどをうかがいます。
──新海さんが、新井湯で訪問看護を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
20年ほど前、新井湯がまだ銭湯でデイサービスのみを提供していた頃に1年半ほどパートで働いていたんです。あの頃はご利用者様のバイタルを測って、お風呂に入っても問題がないかを確認する、といったことをしていました。
それから長く救急の病院に勤務した後、2年ほど前から訪問看護に携わるようになり、この地域のご利用者様を訪問する機会も増えていました。しかし、働いていた訪問看護ステーションが閉鎖することになった関係で、新井湯にもご挨拶に来る機会がありました。その時に「うちで訪問看護やってみない?」と声をかけてもらったんです。
──再びこの場所で、という想いがあったのでしょうか?
新井湯で働いていたのは20年前とはいえ、「地域の方々の健康を支える」ために働いている皆さんの姿勢や、会社のカルチャーは変わっていないなと感じました。何より、新井湯には、90年以上も地域の人たちに愛されてきた街の銭湯があるんです。お風呂の時間になるとすごい人で賑わいますし、イベントにもたくさんの人が集まってきます。
そんな場所に「看護」が加わったら、もっと安心して暮らせる地域になるんじゃないかって思いました。

──病院と訪問看護では、現場の雰囲気もずいぶん違いますよね?
そうですね。病院は医療機器も人手も揃っていて、何かあってもすぐに助けられる環境です。チームで迅速に対応できるのが強みですね。
でも、訪問看護ではそうはいきません。ご自宅という環境の中で、たった一人で判断し、ケアを提供するんです。
「何かおかしいな」「これは病院に連絡した方がいいかも」と思った時、すぐに動けるかどうか。観察力と判断力がすごく求められると思います。
とはいえ、訪問看護における全てを、最初から一人で背負うわけではありません。私自身、訪問看護を始めた当初は不安もありましたが、必ず先輩と一緒に同行し、経験を積みながら少しずつ独り立ちしていきました。
管理者として、わからないことはすぐに相談できるような連絡体制や環境を作ります。困ったときに一人で抱え込まずに済むからこそ、少しずつ自信を持って判断できるようになるはずです。訪問看護が初めてという方でも、しっかりサポートしながら一歩ずつ進んでいける職場にしていきます。
──訪問看護では、オンコール対応、つまり緊急時に駆けつける体制も必須ですね。

はい。夜中であっても「息が苦しい」などのご連絡があれば、必要に応じてすぐ駆けつける体制を整えます。電話対応だけで済むこともあれば、実際に出動することもあります。
ご応募いただく方の対象エリアを限定するわけでは全くありませんが、ご利用者様は訪問看護ステーションの周辺の方になることが想定されるので、お近くにお住まいの方の方が、オンコール対応時の負担も少なくて済むかもしれません。
──新海さんが訪問看護で大切にしていることはどのようなことですか?
やっぱり、ご利用者様が「その人らしく生きること」を支える看護ですね。
病院では、決められたマニュアルに従って動くのが基本です。でも訪問看護では、その人の生活や価値観に合わせて、ケアの形を変えることができます。
例えば、足腰が弱っている方に対して「ポータブルトイレを使えば安全」と一般的には言われているでしょう。しかし、「自分の足でトイレに行きたい」というご本人の気持ちを尊重することが、その方の心身の健康にとって必要だと私は考えています。だから、「じゃあ、どうやったら転ばずに一人でトイレに行けるか」を一緒に考える、といった看護をしていきたいです。
それから、ご家族との関わり方も、訪問看護を請け負う者として大切にしています。
病院ではゆっくり話す時間がなかなか取れませんでしたが、訪問看護では、ケア中やその合間に、ご利用者様だけでなくご家族とも話せます。ご利用者様ご本人が「家族だからこそ本音を言えない」こともあり、第三者である看護師には素直に話せたりもする。ご家族にさりげなく伝えることで、「実はこう思っていたのか」と気付いてもらえることも多いです。ご利用者様とご家族の橋渡しも私たちの役目。マニュアルにすることができない、人に寄り添うケアをしていきたい、という方が力を発揮できる職場にしていきたいです。
──新井湯ならではの強みは、どんなところにありますか?

多職種がひとつ屋根の下にいるということですね。通所や小規模多機能など、介護サービスも同じ建物内にあるので、職員間で「あの方の調子、最近どう?」とすぐに情報を共有できるんです。
こうした情報の連携は、伝言が重なってしまうと、何か間違いが起きるリスクが高まります。だからこそ、できる限りタイムラグが少なく、関わっているメンバーが直接やり取りすることが、実はご利用者様のためにも非常に重要です。医療現場で働かれたことがある方であれば、よくご存知だと思います。
すぐそばにいるからこそ、スピーディに話し合いの場を持つことができ、連携してケアを組み立てられる。弊社の訪問看護では、この強みを最大限に生かしてサービスを提供していきたいと考えています。
